竹富島周辺を巡る

 石垣島に着いたら少し曇っていた。那覇空港ではかなり晴れていたんだけれど。那覇と八重山では東京と大阪程の距離があるのでそれもしょうがない。時刻は午前11時、丁度待っていたバスで石垣市街へ向かい、ホテルに荷物を預けた。ホテルは離島へのフェリーが数多く出ている離島桟橋の近く、夜には繁華街と化す美崎町にある。その近くは公設市場を中心に土産物屋などが軒を連ねるあぱやにモールがある。今日は午前4時の始発電車で出発したのでまだろくに飯を食っていない。適当に歩き、一番最初に見つけた島料理の店「南の島」という店に入った。

 旅行好きの友人にソーメン・チャンプルは案外美味しいということを聞いていたので、日替わり定食(八重山そば定食)を諦めてそっちにした。これはソーメンのペペロンチーノだな、オリーブオイルは使っていない。簡単に出来そうなので帰ったら作ってみよう。美味しいけど伝統の味ではないような気がする。イタリアの伝統のペペロンチーノはどのくらい美味しいのだろうか。店を出ると霧雨のシャワーのような雨が降っていた。それも屋根着きのあぱやにモール内で暫く土産物を物色しているうちに気がついたら止んで、青空へと変わっていた。おばちゃんによればどうやらスコールのようなものらしい。

 午後からはシュノーケリングをやる予定だった。ダイビングショップのガラス戸をガラっと開けて入ると、8人程度の真っ黒い若者達の視線を集めた、全てスタッフの人達だ。悔しいがサッカー焼けだけでは黒さで分が悪い。この雰囲気はあれに似ている。ゲーム付きの駄菓子屋に入ると、他校の生徒が溜まっており「あ〜ん?どこからきたんよ」「八重山〜?わしゃあ埼玉じゃい」という感じ。しかしその中でも人の良さそうな子が親身に対応してくれた。TOKIOで言えば国分太一キャラだな、顔は全然違うけど。とりあえず太一にウェットスーツとシュノーケルセットを用意してもらい、離島桟橋近くの港からシュノーケルスポットへ向かった。暫く船を走らせ、多分竹富島の東、アイヤル浜の沖合いくらいのところで船を停めた。ここからは文で書いてもしょうがない、写真を見てもしょうがない。綺麗な海の中で泳ぐのは良いもんだ。夕方頃港へ戻り、太一に礼を言ってホテルに戻る。部屋に着いて一番最初にするのは、 音楽環境をセットすること。これがあるだけで全然違うしね。この日は原付を借りて石垣島内を探検するつもりだったけど、横になったら眠ってしまった。さすがに4時間位泳ぎ続けて身体は疲れていたみたいだ。

シュノーケル(1)
珊瑚と魚(1)
シュノーケル(2)
珊瑚と魚(2)
シュノーケル(3)
珊瑚と魚(3)
シュノーケル(1)
珊瑚と魚(4)
  シュノーケル(1)
珊瑚と魚(5)
  シュノーケル(1)
丸と魚

 起きたら窓の外はすっかり暗くなっており、午後9時だった。時間を無駄にしたことを後悔しながら急いで外に出て、美崎町内を歩く。いかがわしいお店に入らないように注意して、居酒屋風のお店「八重山村」に入った。生ビール3杯、ぐる君のから揚げ、ラフテー、茄子の揚げ出しを頼んだ。こっちの生ビールはなんかデカイ。必ず大ジョッキという感じだな。オリオンビールって普通だね、普通においしい。結構酔いながらも港やその付近の公園を散歩した。終始下手な三線の音色が聞こえた。下手だけど、その一音で伝わるからずるい楽器だと思う。部屋に戻るとPearl Jamの"Yellow Ledbetter"が流れていた。南国らしい民謡でも最近よく聞くレゲエでもなく、これが響いた。久しく聞いていなかったのに。この曲を皆に聴いて欲しいと思う。

 次の日はこの旅のメイン、竹富島に上陸すること。朝6時に起きてホテルのバイキングを食べる。日頃から朝どんぶり1杯のご飯とパンを2,3個食べるので、旅先でも例外はない。8時半のフェリーで竹富島に向かう。15分程で竹富島に着くと出迎えていた貸し自転車屋の自転車を借りた。とりあえずイアン・カーティス号と命名する。舗装されたデイゴの並木道を駆け上がっていく時にはテンションがかなり高まっていた。とんぼが沢山飛んでいて顔に当たりそうになる。程なくして舗装道路は終わり、白い道と石垣、赤い瓦屋根の集落に落ち着いた。とにかく人がいない、人口300人の島らしいが、50人いるだろうか?という印象を持った。実は監視されてたら怖いけど。スケジュール機能もついている右脳地図を頼りに「なごみの塔」に向かう。なごみの塔は全く高さはないけれど、島自体の標高が低いのでとても見晴らしがいい。そこからは石垣島本島、反対側には小浜島、西表島が展望できる。塔からの眺めで地理を把握し、次の目的地へ向かう。カーティス号を走らせていると、道が狭くなってきた。可笑しいと思いながらもテンションは進めだ。止まっている事が我慢ならない。木々の中から海が見えた。案内板によればあっちは「安里クマヤの墓」のようだ、かなり北の方向へずれていた。安里クマヤという人は美人さんだったらしく、琉球政府の役人の求婚を受けたが、これを断って島の繁栄に勤めたらしい。もし美人なら役人の求婚は断れ。沖縄の代表的な民謡「安里屋ユンタ」に謡われている。確か坂本龍一もやってた曲だ。その先の海はとても綺麗だった。しかも人が誰もいない。ガイドブックには載っていなかったので浜の名前はわからない。カーティス号を置き、砂浜にしゃがみ込んだ。両手を拡げクラウチングスタートの姿勢をとる。腰を上げ、息を止めた。ダーン!とハシが大声で叫んだ。キクは飛び出す。数歩先を走る予感の中の自分を追う抜こうと思った。硬い砂を右足が三回目に蹴った時だ。体が急に軽くなった。熱を孕む予感と溶け合った。手に入れたぞ、とキクは思った。ずっと外側にあって俺を怯えさせた巨大な金属の回転体、それを俺は自分の中についに手に入れたぞ、そう思った。

フェリー
竹富島へのフェリー
デイゴ並木
集落へ続くデイゴ並木
竹富島風景
集落の石垣
竹富島風景
集落を歩く
  竹富島風景
オブジェとシーサー
  竹富島風景
何かの花
なごみの塔
なごみの塔
  なごみの塔
塔からの眺め
  なごみの塔
塔からの眺め
クマヤの墓へ続く道
クマヤの墓へ続く道
  クマヤの墓へ続く道
クマヤの墓へ続く道
  クマヤの墓近くの海
海とカーティス号
クマヤの墓近くの海
クマヤの墓近くの海
  クマヤの墓近くの海
軽くて靴擦れしない
  竹富島風景
集落の風景

 西桟橋の方へ向かうと観光客が見られるようになった。そこからコンドイビーチへ向かうと更に人が増えてきた。皆はここを目当てにしていたようだ。カーティス号を停め、オリオンビールを買って歩く、人が少なかったらパラソルでも借りてのんびりしようかとも思ってたけど、そういう感じではなかった。隣りのカイジ浜まで歩く。少ししてやっぱり人が見えなくなった。白と黒の2匹の鳥が水浴びをしている。カイジ浜は星の砂で有名なところらしい。砂浜にかがみ込んで星の砂を探している人が結構いた。コンドイビーチに戻るとさっきよりも浜が干上がっており、ビーチから300メートル先にも砂浜が出来ていて歩いていけるようになっていた。かなりの遠浅なので子供でも溺れる事はないだろう。

西桟橋
西桟橋
西桟橋
西桟橋の海
コンドイビーチ
コンドイビーチ
コンドイビーチ
コンドイビーチ
  カイジ浜
カイジ浜
  カイジ浜
カイジ浜

 一度集落に戻り、「泉屋」という雑貨屋でお土産を買った。半ズボンがガキみたいで良かったけど似合わないので諦めた。次はコンドイビーチ、カイジ浜の反対側、アイヤル浜へ向かう。こっちの方はやっぱり観光客がいない、水牛舎の匂いで田舎の岩手を思い出す。2つの広大な牧草地を抜け、道はやっぱり険しくなる。カーティス号を走らせると、トンボが舞い、鳥が鳴き、色んな蝶々が飛び交い、地面にはコバルトブルーの尻尾の蜥蜴が走り出す。アイヤル浜は流石に遊泳するような感じじゃなかったけど、海はやっぱり綺麗だった。こういう整備されていないところも魅力だと思う。前日のシュノーケリングスポットからここが見えたはずだ。アイヤル浜から引き返す途中、牧草地の向こう側に一際怪しく立つ鳥居が見えた。これは行かずに終われないという好奇心で向かう。標識を見ると竹富島に数多く存在する御嶽(オン)の一つらしい、これは神社のようなもので島の聖所、本島ではウタキと呼ばれている。標識には、島の人が何かを祈りを捧げる時に参る場所なので、簡単には立ち寄らないで下さいと書かれていた。入るのは止め、この先にもあるという2つの御嶽に向かった。先は木々が生い茂り、暗くなっていた。ここの2つの御嶽、雰囲気がちょっとおかしい、御嶽は集落にもあるのだけど、ここはなんか違う気がした。道の先には(名前忘れた)浜があるらしく、やはりガイドに乗っていなかったので向かおうとした。道は今までになく険しい。カーティス号を走らせた瞬間、鳥と虫が一気に鳴きだした。あぁ駄目なんだ、という感覚になりここから先は引き返す事にした。

アイヤル浜へ続く道
アイヤル浜へ続く道
アイヤル浜へ続く道
アイヤル浜へ続く道
アイヤル浜へ続く道
アイヤル浜
御嶽の鳥居
不気味な御嶽の鳥居
  ラスタカラーの水牛
ラスタカラーの水牛
  目印にした給水塔
目印にした給水塔

 時刻は午後1時を過ぎていたので、竹富島で飯屋を探す。集落に向かい、八重山そばで有名らしい「竹の子」という店に向かった。結構人が並んでいたので、予定変更。飯屋じゃないけど「パーラーぱいぬ島」というお店で島そばと生ビールを頼んだ。ここまでで水1.5リットルは飲んだけど、ジョッキ一気になくなったよ。島そばもピィヤーシ(島の胡椒)を入れたりして結構美味しかったな。

 最後に行った浜、美崎浜はちょっと変わっていた。砂浜ではなく、黒い岩がゴツゴツしている。岩の上伝いにをジャンプして進む。黒い岩に溜まった海水の中には青い熱帯魚が泳いでいた。10メートル離れた海には小さな島みたいになっている。この浜は特に楽しかった。地獄と楽園という感じ。この浜では少し不思議なことがあった。浜についた時、自転車が7台あったのだけど人が1家族4人しか見えない。帰り際、浜の脇に美崎(ミサシ)御嶽がある事を思い出した。ここにもやはり鳥居があるのだけど、その前に停めてある自転車3台分が余計だったのだ。大人用自転車2台と子供用自転車1台。ここに停めて自転車を使わずに帰る理由は見当たらない。中に入って戻っていないのだろうか?良くみると自転車はかなり錆びきっていて、1ヶ月以上はたっているものだった。

八重山そば
八重山そば
美崎浜へ続く道
美崎浜へ続く道
美崎浜
美崎浜
美崎浜
美崎浜
  竹富小学校
竹富小学校
  山羊定食
山羊定食

 午後3時を過ぎて、この島の周囲を巡る舗装道路を最後に1周した。カーティス号のメンテナンスがいいのか、道の下り坂上がり坂のバランスがいいのか車輪がよく走ってくれる。立ちこぎで、空と左右の景色を眺めながらカーティス号を走らせる。不安と欲望。やってみたいというやむにやまれぬ気持ちと、それを恐れる気持ちと。行ったことにある場所と、これから行きたいと思う場所の。ありがとうカーティス号。

 夕方に石垣島に戻り、原付を借りて本島も見学しておこうかと思ったが、時間が遅すぎて借りる事ができなかった。歩くことにする。マップルのガイドを頼りに石垣鍾乳洞とその近くの山羊料理の店を目指す。石垣も市街を抜けると一気に田舎化する、歩いていろんなものが見れたので良かった。途中、ゥメ〜という山羊の鳴き声が1回聞こえた。山羊料理はそんなに美味しいのだろうか?本人が行ってるんだから間違いないだろう。40分ほど歩いて山羊料理の店「一休」に着いた。一休定食と生ビールを頼んだが、山羊刺身を切らしているという。それでも山羊汁、山羊の炒め物があるのでよしとした。味は・・これはすごいアフリカな感じがした。そこら辺の動物を殺して煮たり焼いたりしたらこんな味がするに違いない。変わった味がして・・でも美味しい、旅にきたならこんな変わった料理が食べたいものだし。山羊刺しがなくて良かった・・かも。食後、鍾乳洞に行ったら入口に人がいなかった。居ないので勝手に入った。夕闇の中、殆どない明かりの鍾乳洞を見る。でかい鳥が飛び立ったりして、映画の中のようだった。結構怖い、自分じゃなきゃまず無理だろうな。しかしあいつはこの中にいる。(つづく)

参考文献:
マップル石垣・宮古・西表島
スティーブン・キング「IT」
村上 龍「コインロッカー・ベイビーズ」